2008年「玉葛/tamakazura」
紫式部「源氏物語」に登場する玉鬘は、母を早くに亡くす。美しく成長をし、複数の求愛を受けるが、時の流れに翻弄されてしまう。
それでもなお、運命を受け止め心美しく生きていく玉鬘…。
私たちも、それぞれが、運命に流されているわけである。その運命が望む形、望まぬ形であろうと、しっかりと目を見開き、生きていくしかない…、いや生きていかなければ、いや生きぬいていきたい…
衣装
葛(くず)の花を思わせる艶やかな紫をアクセントに、上品で少し色っぽさのある着物スタイル。
フリルを身頃にあしらって、立体感のあるシルエットに仕上げた。
音楽
天地開闢 陰陽(めを)をわかち明らかになりて
白きなるものたなびきて 重く濁れるもの 地(つち)となる
そののち葦牙(あしかび)の 如し神生まれ 大和の国を成す
八百(やおろず)の神在り
森羅万象 ことごとく 人それを奉り 神に倣いて
自らの心根を じねんに重ねて 言の葉に移し 数多(あまた)の他に広めさす
… 日本書紀 巻第一 神代上(かみよのかみのまき)の一節を音にのせるためのアレンジを施した導入。
私たちが日本人として生まれてきたからには逃れられないルーツがある。その歴史があってこそ今があるのだ。
しかし、そこに固執するばかりでは先へは進めない。
しっかりと軸を保ち、その上で周りの変化にもしなやかに沿っていく姿こそが美しくもあり、のびやかに生きていくことができるのではないだろうか。
玉鬘が貴族の世の中で翻弄されながらも、誇り高く生きていったように…